2009-01-01から1年間の記事一覧

その36 世界に通用したい願望と向き合う本。

先週のある朝、朝日新聞をめくるとユニクロの柳井会長兼社長のインタビューが載っていた。「オリンピックと同じで、世界市場では少々強いくらいでは勝てない。自分たちの強みをより強くすべきだ」。こう書いてあったことが、しばらく頭に残っていた。 そのあ…

その35 人を動かす本。

読んでいるだけで、一部の人から馬鹿にされるジャンルがある。自己啓発本だ。いわゆる本読み、小説好きであるほど、軽蔑する傾向が強い。 なぜ自己啓発本が嫌われるのか。自己啓発本の根底には「言葉で人は変わることができる」という確信がなくてはならない…

その34 腹痛に体を許してしまった人を好きになる本。

昔から、恋愛相手とは別に、同性にターゲットがいる。その人のしゃべりかたを真似したくなったり、履いているスニーカーの別の色はないかと探してみたり、環境が変わって滅多に会わなくなると、すぐさまその人が昔持っていた財布とそっくり同じものを買って…

その33 「海外旅行」という流行を見つめるための本。

この2年間、狂ったように海外へ出かけた。ソウル、パリ、香港、北京、サイゴン、プラハ、大連…行き先はメチャクチャだけど、旅のスタイルは同じだ。目的地は大きな都市、いつも一人旅、航空券や宿の予約は自分の手で、出発前に関連する文学作品や資料を徹底…

その32 自分のブログへの愛想が尽きた時に読む本、4冊。

自分のブログを持つというのは、勝手に株券を発行する行為にどこか似ていると思う。その一握りは上場し、市場にあまねく流通し、いつの日か、アウディA5やポール&ジョーのコスメに変わったりするのかもしれない。でもそれはもちろん天文学的確率での話で、…

その31 また恋におちてしまった。

空気が冷たく澄んで星の美しい季節になった。この季節になると、鞄のなかの本が3冊になる。いつもは2冊、いま読んでいる本とその本が読み終わったときのための本を入れているのだけど、この季節に読みたいとっておきの1冊のせいで鞄がちょっと重くなるのだ…

本の索引(1〜65)

●これまでに 紹介してきた本● 記事一覧はこちら◇書名別 あ ・『あなたには夢がある』(その12) ・『行きそで行かないとこへ行こう』(その24) ・『1Q81』(その11) ・『いつか、僕らの途中で』(その13) ・『宇宙飛行士オモン・ラー』(その63) ・『…

その30 中小の組織人が読むと元気になれる本。

かつて営業マンとして東北を担当していた時には、山形にもたびたび足を運んだ。人々の気質は陽気とはいえないものの馴染んでしまえば素朴さと独特のこだわりを持つ方が多くて面白いし、風景は雪の季節もそうでない時も美しい稜線に囲まれスイスに来たようだ…

その29 完全には治らない病を抱えた人に贈る本。

あと数年で三十歳になろうとする私にはわかっている。そう、人に何かを伝えるようとするとき、思いの強さと伝わりやすさにはあまり関係がないということが。 たとえばいま、一人の男子中学生が同級生に告白しようとしているさまを想像してもらいたい。男子の…

その28 墓前で必要な本。

アルバムに写真が増えたのは久しぶりだ。まわりに一人二人、シャッター押すのが大好きといったタイプがいると手持ちの写真は増えるものだが、偶然なのかそういう人を選んでいるのか、僕の親しい人たちはあまりカメラを常用しない。 墓前の写真である。高校陸…

その27 結婚する、あるいはしない僕らが読んでおきたい本。:女編

「4年付き合っていた男性との関係に終止符を打った。「結婚しよう」という言葉がきっかけ。半年前のお話。「結婚」が怖くて逃げ出したのだ。 この数年間、パターン化されたような恋愛をしている。出会いから別れまで、同じ流れを辿ってしまうのだ。出会って…

その26 何が本当に面白いのか判らなくなった時に読む本。

季節はずれの連休、家にこもって映画のDVDばかり観ていました。そんなときふと「傑作」って何だろうという疑問が浮んだので、それについてちょっと書いてみます。* * * 傑作があると人から聞いて、どんなもんじゃいと感性をむき出しにして触れてみたはい…

その25 続・結婚する、あるいはしない僕らが読んでおきたい本。

本を読むといいことあるか、と問われたら答えに困る。好きなものだけ食べても健康にならないように、好きな本をどんなに読んでも賢くはならないと思う。でも、中には身につまされることがある。自分の一番痛いところを突かれて、唸りをあげてしまうような文…

その24 お見舞いには本を頂戴。

入院をしてしまった。8月の半ば、とても暑い日。1週間ほどで退院し、1週間は自宅療養。退院して1週間はまともに歩けなかったので部屋に篭って本ばかり読んでいた。お見舞いで本を大量に貰ったということもある。お見舞いに来てくれた人は16人。うち13人は本…

その23 何でもいいから本の話をして。

スタインベックの『ハツカネズミと人間』という小説に、納屋に1人で暮らしているクルックスという黒人の馬屋係が、2人づれで渡りの労働者をしている男たちの1人に話しかける場面がある。 「それからは本を読むしかねえ。本なんて、つまらねえよ。人間には…

その22 旅は道連れ世は情け的な本。

男はよく旅に出る。いつも一人だ。孤高を気取っている訳ではなく、本当は寂しがりなのだが、人格に大いなる問題があるため道連れになるような友がいないのである。だから男には本しかいない。 男が考える旅の本の条件は次の通り。 ある程度厚いもの、でも重…

その21 スピリチュアルで暑さを乗り切る。

革靴が嫌いだ。夏に履いている人はみんな嫌いなはずなのに、みんな我慢しているからというそれだけの理由で履いている感じが嫌だ。なかにはスーツに似合うプラダかどっかのスニーカーを履いてお茶を濁していたり、靴の流通センターで売っていそうな超地味な…

その20 64回目の夏に読んでおきたい本。

昔から病気のデパートといっていいくらい体が弱くて、特に夏になると胃は重くなるし頭はボーッとするし勤労意欲は失せるし(これは年中か)、ふとググってみるとどうやら自律神経失調症というのがあるらしい。ついに自分も現代人の仲間入りかとうれしくなっ…

その19 彼について本が教えてくれた二三の事柄。

人の本棚を眺めるのが好きだ。口の軽い本たちは、主のことをぺらぺらと喋りだす。表に置いてある本は、その人の美意識、その裏に隠された本は、その人の本音。知らなかったあの人が、少しだけ近くなる瞬間。誰かと仲良くなりたいな、と思ったら本棚を見れば…

その18 自分のない人から、自分探しの秘訣を学ぶ。

もう「自分探し」という言葉自体は流行らなくなったけれど、20代後半という年齢の私の回りにはいまだに、同様のテーマに悩んでいる友人がいる。「いまの自分、これでいいのかなあ…」という焦りによって目の前の物事がカスんで見えてくる症状である。 しかし…

その17 結婚する、あるいはしない僕らが読んでおきたい本。

たまらなく暑い日が続くので、涼しげなシーンから始まるこの短編をご紹介します。隠れたファンの多い、静かで整った作品です。 この時、プールの向こう側を、ゆるやかに迂回して走ってきた電車が通過する。吊革につかまって立っているのは、みな勤めの帰りの…

その16 生きることに絶望したときに開く1冊。

辛いことがあると、そればかり考えてしまう。「辛いこと」を反芻するのは、ほんのりと甘いから。でも、長く咀嚼し続けると、ある瞬間からそれは嫌な苦さに変わる。頭の奥が痺れてくる。すべてが面倒になる。明日なんて来なければいいのに、と思ってしまう。…

その15 事実よりも信用できる小説を。

小説とノンフィクションの違いについて少し時間をとって考えたことのある人なら、その違いは「ルール」にしかないということに、きっと思い至るはずである。「この物語はフィクションです」という断りひとつあるかどうかが決め手なのだ。 突然こんなことを書…

その14 北方謙三になれない僕らが読むべき本。

近ごろ、困ったことに、美男子が好きになった。(ホモじゃないよ) テレビにいい男が出ていたりすると、つい手を止めてしまう。以前なら容赦なくチャンネルを替えていたはずが、どういう変化だろうか。中学でも高校でも、クラスに三、四人は評判のモテる男が…

その13 愛について語るときに我々の読む本。

「本を開いたら、君がいたよ」。大好きだった人から言われて思ったのは、どんな本なんだろう、ではなく彼の目にうつる自分ってどんな姿なんだろう、ということだった。 毎朝30分間は読書の時間。電車の中、膝の上でそっと本を広げる。男の子がポストから手紙…

その12 人生の掛け率を下げたいときに読む本。

リリー・フランキーの映画評『日本のみなさんさようなら』に、忘れられない一節がある。 人にはそれぞれ日常のドラマレートがある。人生の中で一度でも千点一万円の大デカピンで打った者は、それ以下のドラマレートではシビれなくなるが、ずっと千点20円のレ…

その11 たまには話題に乗って読んでみた本。

流行りもの、行かせて頂きます! (なんだか鉄砲隊に向かって日本刀で切り込みに行く心境だ。)1Q84 BOOK 1作者: 村上春樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/05/29メディア: 単行本購入: 45人 クリック: 1,408回この商品を含むブログ (1247件) を見る 読…

その10 そもそも本が好きじゃない人に贈る一冊。

人生の半分は読書をしていた。 ご飯を食べながら読み、 電車の中で読み、 授業中に読み、 お風呂で読み、 読書をしながら眠りに落ちる。 “テレビと漫画は禁止”という家庭で育ったので幼い頃から活字とは仲が良かった。だから「漫画は読めるけど小説はダメ。…

その9 時間も気力もないときに読む本。

CDは60分あればだいたい1枚聴けるし、映画なら120分くらい座っていれば1本見終わる。いっぽうで本というのは、ときに薄い本でも1冊読み終えるのに半日かかったりする。文庫本なら、レジで支払う金額はCDのアルバム1枚よりずっと少ないけれど、買ってから…

その8 夜が来る前に読む本。

酒場のネタ、酔っぱらいの伝説なんて、面白いに決まっているのだ。 面白い話というのはつまり普通ではない話なのだから、誰でも失敗談の一つやふたつはあるアルコール、セックス、旅についてなら簡単に書けてしまう。おまけにこれらはムードや感傷でいくらで…