その116 眠れないほど疲れたとき、手を伸ばす

まだ18時だというのにホテルへ戻った。 その日はとびきり美味しい食事が出来るお店へ行くつもりで スケジュールを組んでいたのだけれど 朝から予定を詰め込みすぎたため日が落ちてくるころには 疲れ切っていたのだった。 1日のメインイベントである食事は万…

その90 あの日のこと。

目覚まし時計の音で目が覚める。時間をかけ、念入りにお化粧をして、お気に入りの服を着て、高いヒールを履く。会社に行きたくない憂鬱な朝の儀式。「誰かに見てもらわなくちゃ勿体ない、だから出勤しよう」と思うことで無理矢理出社する。3月中旬からの3ヵ…

その67 ひさしぶりとさよならのあいだで。 

いま、こうしてわたしの生活が西瓜糖の世界で過ぎてゆくように、かつても人々は西瓜糖の世界でいろいろなことをしたのだった。あなたにそのことを話してあげよう。わたしはここにいて、あなたは遠くにいるのだから。 あなたがどこにいるとしても、わたしたち…

その55 全世界に裏切られた気分のこんな日は。

嫌なことがあると聴く音楽がある。自分の力ではどうにもできないことに翻弄された日のわたし、乾燥機の中の洗濯物のきぶん。生暖かな風にぶわぶわ吹かれながら同じ場所を回り続ける。熱くて苦しくて頭がくらくらする。なにかを考えるのも嫌なくらいに疲れき…

その50 明日は祖母の誕生日。

さかのぼること昨年11月。エントリ「その33」の最後で薮さんが「ヤトミックカフェ」のマスターとの往復書簡なるものにリンクを貼っていた。面白そうなのでちょっと読んでみたら、そのなかに心衝かれる文章があったので抜き書きしてみる。 本を読んで「著者…

その40 昔の自分に思いを馳せる。

ボクの一番好きな本は、せめて、所々でこっちを笑わしてくれるような本だ。古典も僕はいっぱい読むよ。「帰郷」とかああいったものをね。古典は好きだな。しかし、戦記ものとかミステリーとか、そういったものもいっぱい読むんだ。でも、こういうのはあまり…

その31 また恋におちてしまった。

空気が冷たく澄んで星の美しい季節になった。この季節になると、鞄のなかの本が3冊になる。いつもは2冊、いま読んでいる本とその本が読み終わったときのための本を入れているのだけど、この季節に読みたいとっておきの1冊のせいで鞄がちょっと重くなるのだ…

その27 結婚する、あるいはしない僕らが読んでおきたい本。:女編

「4年付き合っていた男性との関係に終止符を打った。「結婚しよう」という言葉がきっかけ。半年前のお話。「結婚」が怖くて逃げ出したのだ。 この数年間、パターン化されたような恋愛をしている。出会いから別れまで、同じ流れを辿ってしまうのだ。出会って…

その24 お見舞いには本を頂戴。

入院をしてしまった。8月の半ば、とても暑い日。1週間ほどで退院し、1週間は自宅療養。退院して1週間はまともに歩けなかったので部屋に篭って本ばかり読んでいた。お見舞いで本を大量に貰ったということもある。お見舞いに来てくれた人は16人。うち13人は本…

その19 彼について本が教えてくれた二三の事柄。

人の本棚を眺めるのが好きだ。口の軽い本たちは、主のことをぺらぺらと喋りだす。表に置いてある本は、その人の美意識、その裏に隠された本は、その人の本音。知らなかったあの人が、少しだけ近くなる瞬間。誰かと仲良くなりたいな、と思ったら本棚を見れば…

その16 生きることに絶望したときに開く1冊。

辛いことがあると、そればかり考えてしまう。「辛いこと」を反芻するのは、ほんのりと甘いから。でも、長く咀嚼し続けると、ある瞬間からそれは嫌な苦さに変わる。頭の奥が痺れてくる。すべてが面倒になる。明日なんて来なければいいのに、と思ってしまう。…

その13 愛について語るときに我々の読む本。

「本を開いたら、君がいたよ」。大好きだった人から言われて思ったのは、どんな本なんだろう、ではなく彼の目にうつる自分ってどんな姿なんだろう、ということだった。 毎朝30分間は読書の時間。電車の中、膝の上でそっと本を広げる。男の子がポストから手紙…

その10 そもそも本が好きじゃない人に贈る一冊。

人生の半分は読書をしていた。 ご飯を食べながら読み、 電車の中で読み、 授業中に読み、 お風呂で読み、 読書をしながら眠りに落ちる。 “テレビと漫画は禁止”という家庭で育ったので幼い頃から活字とは仲が良かった。だから「漫画は読めるけど小説はダメ。…