その14 北方謙三になれない僕らが読むべき本。
近ごろ、困ったことに、美男子が好きになった。(ホモじゃないよ)
テレビにいい男が出ていたりすると、つい手を止めてしまう。以前なら容赦なくチャンネルを替えていたはずが、どういう変化だろうか。中学でも高校でも、クラスに三、四人は評判のモテる男がいて、彼らとは嫉妬のあまり話すことすらできなかったというのに。
どうやら、諦めがついたらしいのだ。顔で勝負しても負けるのは、昔からわかっていた。ただ、それで惨めな気持ちになっていること自体が惨めなのだと気づかせてくれたのは、この一冊である。
- 作者: 徳大寺有恒
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/11/19
- メディア: 文庫
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内容紹介を引用すれば、
十代の頃から「ぶ男コンプレックス」に悩まされ、大学時代には「田舎者コンプレックス」が追加。一念発起し、レーシングドライバーとして頂点を目指すも挫折。その後立ち上げた会社は倒産、三十歳で無一文に。
表紙の写真を見ても、まあお世辞にもハンサムとはいえまいが、幸せそうだし格好いい。そんな男が、「人生いろいろだが、ぶ男にはぶ男なりの生き方がある」と語るのだから、これ以上説得力のある本もないだろう。凡百のポジティブシンキング本やネオビジネス書など吹き飛ばすパワーがある。暑さでくたばりそうだし、以上紹介終わりといきたいところだが、せっかくだから至言を抜き書きしておこう。
- だいたい細かいことを気にしすぎだぜ。臑毛のない男なんてカッコ悪いと思わなくちゃ。臑毛のあるなしより、そういうことを考えてるってこと自体が恥ずかしい。
- お洒落に関しての僕のモットーは「流行を知らないのはただの無知」「流行を追いかけるのはただの馬鹿」というふたつ。(略)エロ本は堂々と、ファッション誌は是非こっそりと読んでもらいたい。
- 美男であるほど、間抜けがことさら強調されることもある。なんといっても、女は美男に期待するものが大きい。そこへ行くとぶ男は楽である。元々あまり期待されていないのだから。
- ぶ男がハンサムな男に勝てる点がもしあるとしたら、それは哀しさじゃないかと思う。オペラ『道化師』の哀しさに涙を流す女がいたら、そいつは、いただきだ。
僕もいただきたいものである。
人が本を何のために読むのかと問われれば、それは悩みを抱えているからだ。たくさん読む人は、たくさん悩んでいるからで、別にそれは偉いわけでも何でもない。
シンプルな問題には、時にシンプルな回答が必要である。いわゆる「読書人」には、強くて単純な本を馬鹿にする悪癖がみられるけど、彼らは出版の地獄に堕ちるであろう。本は厚き故に尊からず、難しき故に尊からず、人の役に立つ故に尊いのである。
この文庫を会社の机に付箋をつけて置いておいたら、見つけた後輩が一言「いろいろ大変ですね」
おい、どういう意味だ?(藪)