2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

その92 新宿がフクシマになる日。

新卒採用の面接官をしていたら、学生から質問された。 「大震災の影響で、小説は変わると思いますか?」 いい質問ではあるけれど、採用試験という限られた時間で、しかも上司の目がある公的な場で答えるのは難しい。「新聞やテレビが騒ぐほど、物語は変わる…

その91 テキストブック。

頭の中で何度も再生する風景、というのが誰にでもあるんじゃないかと思う。私の場合、中学3年生のとき、教室の一番後ろの窓際の席に座って、顔を左に向けて、昼休みの終わりに見ていた中庭の風景というのがそのひとつに当たる。空が曇っていて、視線を落と…

その90 あの日のこと。

目覚まし時計の音で目が覚める。時間をかけ、念入りにお化粧をして、お気に入りの服を着て、高いヒールを履く。会社に行きたくない憂鬱な朝の儀式。「誰かに見てもらわなくちゃ勿体ない、だから出勤しよう」と思うことで無理矢理出社する。3月中旬からの3ヵ…

その89 探偵の仕事。

仕事は人を悩ませるものだ。 職業は人生に意味を与える。だから手がけた仕事が順調なら、天下取ったように思い込むし、うまくいかないと、存在まで否定されたような気がする。 うまくいかなくて落ち込むのは、うまくいった状態を理想としているからだ。だが…