2013-01-01から1年間の記事一覧

その143 青春と別れるための一冊。

このブログも断続的ながら4年くらい続けてきて、自分としては読んだ本のことをもう一度理解するためのいい機会になったり、あとで人に話すときの記憶のよすがになっていたりして、意味のある活動だった。けれどもいっぽうで、ブログってなんとなく「男らしく…

その142 部屋に植物を置かない人にすすめる一冊。

今年の春に同じ町内で引っ越しをして、バオバブをひとつ買った。どことなくドラクエに出てくるマンドラゴラを思い出させるずんぐりむっくりした太い幹に似合わない小こい枝が幾つもついている。 鉢植えは買っても、切り花は買ったことがない。この差はなんだ…

その141 猛暑に心頭滅却したい人にすすめる本。

夏が暑い場合、夏を殺してしまいたい人と、夏を涼しくする人と、夏が終わるまで待つ人がいると思う。私は根が姑息なのでこういう場合も真ん中の秀吉的態度で夏に立ち向かう。よく、エレベーターの中などで隣にいる人との会話に詰まるとさりげない調子でお暑…

その140 自分の時間をあざやかにする本。

本の営業をしていると、自分が担当している店が閉店するというのは悲しい。とりわけ私にとってつらいのは、同じ棚をもう見ることはないのだ、と思うときである。その棚には、店の人のおすすめと、人気であるからという理由でおいてある本が示すお客さんの好…

その139 かっこ悪くなりたいと思ったときに読む本。

このところ痛切に思うのは、自分のマイナス要素の正しい表現方法は自分で学ぶしかないということだ。勉強ができる、勝負に勝てる、お金がもうかる、求愛される、世界中で必要とされる、そんな方法を教えてあげましょうとささやきかける人たちはいつの世にも…

その138 馬鹿フェチに捧ぐ一冊。

たいした問題じゃないが―イギリス・コラム傑作選 (岩波文庫)作者: 行方昭夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/04/16メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 72回この商品を含むブログ (26件) を見る この本を翻訳している行方昭夫(なめかたあきお)さんの…

その137 もうエッセイしか読みたくないあなたへ。

私の祖父はせっかちで、車を運転していきつけの中華料理屋「一品香」に行く際には必ず車中でその日の全メニュー進行を考えさせられた。店に着くまでに注文する料理を決めておかねば気がすまないらしいのだ。その遺伝子を四分の一程度引き継いでいる私もそこ…

その136 日本を愛したい人にすすめる本。

この頃、自分のなかで日本愛がちょろちょろと岩清水のように湧出しはじめた。それはまるで親の意思で無理矢理結婚させられた相手と暮らしているうちにこの人いいところあるかもと思い始めた全近代的夫婦の心境みたいなものかもれしない。しかし声を大に、と…

その135 誰よりも自分に薦めたい一冊。

小学生の頃は新聞記者になるのが夢で、大学時代には新聞会に所属しつつ新聞社でアルバイトをし、就職したら新聞印刷工場をめぐって輪転機が回るのをずっと見ていた私は、いまほとんど新聞を読まなくなった。家に届いた新聞を開くのは、週末に靴磨きをすると…

その134 憧れはBLのなかに。

三十を過ぎてこんなことを言うのも何だが、胸が欲しい。それというのも仕事でBLの棚ばっかり見ているせいだ。BL。もはやおしゃれな響きさえ感じるが今私はBLに影響を受け始めている。BLに出てくる男みたいになりたいと思うのだ。BLといえば聞こえはいいがつ…

その133 フランスのちびまる子ちゃん。

高校生のころの愛読書はさくらももこの『ちびまる子ちゃん』だった。妹の本棚から抜き出して読むのがとても好きだった。社会人になって出張先の静岡を訪ねたとき、清水の商店街で、まる子の好物「甘なっとう」を買った。それを手に提げて、大部分のシャッタ…

その132 おめでたい日に違和感を感じたときに読む本。

何十年も生きてきて、自分の幸せを疑わない人というのはたぶんいないと思う。それなりに幸せな人も、もっと幸せな人を見て嫉妬したり、いつか突然に訪れる自分の幸せの崩壊をぼんやりと予感して不安になったりするのではないかと思う。幸せはいつもさしあた…

その131 絶対に読んでください、と言われた本。

誰に薦められなくても読む本と、誰かに薦められなければけっして読まない本がある。単純にその本のことを知らなかったからというより、絶対に読んでといわれなかったら読まないような難しい本や、まじめな本がある。なるべくなら本は誰にも薦められずに読み…

その130 残念という倫理を学ぶ。

いっとき海外ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」にはまってずっと見ていた。どこにはまったのかというと、四人の女主人公キャリー、ミランダ、シャーロット、サマンサが休日の朝に集まってごはんを食べながら強烈な下ネタを交えて自らの性愛体験を語る…

その129 教養としてのゾンビ。

ゲーム好きの間で、異様に難易度が高かったり単調だったりするゲームのことを、いくぶんかの愛着をこめて「クソゲー」と呼ぶことがあるが、本の世界にもひっそりと、そういう「おバカ本」の類は息づいている。先日、本の業界紙の宣伝をぼんやり見ていたら気…