その80 女神に惚れてもらいたい男子必読の書。
自由の女神と勝利の女神、どちらに惚れてもらいたいかで男の生き方は変わってくると思う。ふつうはどちらかに惚れてもらえばまあ満足で、自分のやりたいことをやって富も名誉も得ようとする男なんて、考えが浅いか自分に相当厳しいかのどちらかだ。しかし世の中には高い目標を掲げ、正しい戦術を選択し、粘り強い努力と検証で両女神からの祝福を勝ち取る人々もいる。そんな豪傑にあやかりたい男子の皆さんに是非読んでもらいたい本に最近、出会った。
きっかけは作家・貴志祐介氏の推薦だった。チェスと将棋をモチーフにした最新作『ダークゾーン』を読んで、こんなにすごい仮想世界を組み立てられる人はどんなところから着想を得ているんだろう、と興味をもっていたところ、2010年の「このミステリーがすごい!」誌上で氏が一冊の本を紹介しているのを見つけた。チェスの世界王者が書いたビジネス書『決定力を鍛える』である。
- 作者: ガルリカスパロフ,Garry Kasparov,近藤隆文
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2007/11/27
- メディア: 単行本
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私はチェスも将棋もわからないので、最強のプレイヤーといわれると、その人は何かとてつもなく記憶力の良い人で、頭の中で何手も先を写真のように見ることのできる超人なのではないかと想像してしまう。しかし本書を読むと、カスパロフはそのような脳内データベースに頼っているから強いわけではないのだとわかってくる。彼が採用するのは、もっと私たちの常識に近い判断プロセスだ。
自分の目指しているものがわからなければ、どこまで先を読もうと関係ない。
指し手を検討する際、私が最初にするのは、ただちに決定木を下っていくことではない。まずやるべきは、その局面におけるすべての要素を考慮し、戦略を構築して中間目標を立てることだ。
私がこのカスパロフの本を読んで特に印象に残ったのは、彼が検証することの大切さを説き、引き分けの価値を証明していたことだ。才能も努力も必要だが、それだけで勝ちつづけることはできない。一日の終わりに自分を振り返り、最初に立てた計画にそって進んでいるかを絶えず検証した者だけが結果を出し続けることができるとカスパロフは説く。そして、つねに優位な状態で戦えるわけではない以上、ときには勝負を先延ばしにし続ける戦術も重要になる。カスパロフが生涯の宿敵としたライバル、アナトリー・カルポフとの対戦成績はなんと、21勝19敗104引き分けだった。結果だけを見れば華々しいチャンピオンがいかに地味な戦いを生きてきたかを知って、私はとても勇気づけられた。
ちょうど新刊のプロモーション時に貴志氏にお会いする機会があったので、思い切ってこの本について話をしてみた。するともう一冊、おすすめの本を教えてもらった。「米長邦雄の『人間における勝負の研究』、あの本にはしびれましたよ」とのこと。将棋のプロが書いた人生指南書である。
人間における勝負の研究―さわやかに勝ちたい人へ (ノン・ポシェット)
- 作者: 米長邦雄
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 1993/02/01
- メディア: 文庫
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勝利を追求してその世界を極めたのち、自由を求めて政治家になった男・カスパロフ。目の前の勝ちを重ねるだけでなく、人生全体での勝利にはさわやかさが大事だと説く米長氏。ふたりの本を読んで、自由と勝利という2つの概念を対立して捉えているうちは男としてまだまだなのかも知れないと、ぼんやり思う。
ちなみに一応書いておくと、私がいま一番惚れられたいと思っているのは、自由の女神と勝利の女神のどちらでもなく、話題のアイドルKARAのリーダー、パク・ギュリという名の女神です。(波)
Kara 2nd Mini Album - Pretty Girl (スペシャル・エディション)(韓国盤)
- アーティスト: Kara
- 出版社/メーカー: Mnet Media
- 発売日: 2009/02/20
- メディア: CD
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